■ 2010年4月~2011年3月の研究会実施記録 

第191回研究会
(センシング技術応用研究会との合同開催)
「注目されるエネルギーハーベスティング技術」
 振動発電デバイスは、私達の身近に存在する音や振動を電力に変換し、これまで活用できなかった振動エネルギーを有効利用する環境に優しいデバイスです。オフィス内の床に振動発電床を採用して歩行の際に発生する振動で発電、あるいは道路の路面に振動発電機を設置し高速道路や橋梁で発生する音や振動で発電を行うことが報告されています。振動発電デバイスには、PZTに代表される高い圧電特性を有する圧電体が使用されています。今回の研究会では、エネルギーハーベスティング技術や振動発電デバイスについて解説していただきます。

日時:2010年(平成22年)5月7日(金)13:00~16:50
場所:大阪府商工会館6F 603号室+604号室
(大阪市中央区南本町4-3-6)
(1)エネルギーハーべスティング技術と発電デバイスの動向
株式会社 村田製作所 技術・事業開発本部 商品開発統括部 商品開発2部
部長 藤本 克己 氏
 自然エネルギーから電気エネルギーを収穫するというハーべスティング電源がかなり現実味を帯びながら議論されている。電池の使い捨てという道義的な問題への配慮の側面もあるが、アプリケーションとしてセンサーネットワークなどが本格的に議論され始めたことが大きな背景にある。こうした動向とともにそれを支えるハーべスティング素子の動向についてまとめる。

(2)PZT薄膜を用いた振動発電デバイス
京都大学大学院 工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻
准教授 神野 伊策 氏
 マイクロデバイスのエネルギー源として注目されている振動発電(エナジーハーベスティング)技術について、特に圧電薄膜を用いた取り組みについて紹介する。小型化と出力の向上は相反する要求であり、高い圧電特性を有する圧電薄膜の開発が必要となる。今回、ステンレスカンチレバー上にエピタキシャルPZT薄膜を転写することで振動発電素子を試作し、その発電特性の評価を行った。



バイオ関連セラミックス分科会第29回研究会

「超音波を活用した低侵襲先端医療の最新技術」
 超音波を利用して身体へのダメージの少ない低侵襲治療を行う技術が昨今注目されています。温熱治療や焼灼効果だけでなく、ドラッグデリバリーのツールとしても有用であり、がん、脳梗塞、血栓症など様々な疾病治療への応用が試みられています。本研究会では、超音波治療技術の工学的基礎と、医歯学分野への応用の二つの側面からご講演頂き、超音波治療の包括的な理解を深めて頂けるよう企画しております。超音波治療研究も典型的な医工連携分野であり、その研究手法はバイオ関連材料の開発において参考になる部分も多いかと思います。

日時:2010年(平成22年)5月28日(金)14:00~17:00
場所:島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)
(1)集束超音波治療とそのための圧電トランスデューサ
東北大学大学院 医工学研究科
教授 梅村 晋一郎 氏
 患部に強い超音波を集束して行う治療法は、10年余り前から臨床に用いられ始め、腫瘍などに対する体に優しい治療法として広まりつつある。治療用超音波の発生源としては、球面状の圧電セラミック振動子や、多数の微小な圧電セラミック振動子を樹脂で繋いで全体として球面をなすよう成型した圧電コンポジットよりなるアレイ・トランスデューサが用いられている。本講演では、圧電セラミックトランスデューサの振動解析や、圧電コンポジット・アレイ・トランスデューサを使用した実験などを紹介しつつ、それらを用いた集束超音波治療の原理について説明する。

(2)超音波を用いた遺伝子・薬剤導入法とその医療応用について
九州歯科大学 口腔顎顔面外科学講座
助教 岩永 賢二郎 氏
 超音波遺伝子・薬剤導入法(Sonoporation)は超音波によって細胞膜に一時的に微細な穴を開けることで薬剤や遺伝子を導入させる技術であり、ナノ・マイクロバブルを併用することで導入効率が向上することが知られている。これまで我々は同法を用いて、様々な細胞や顎顔面口腔領域の疾患モデル動物へ薬剤や遺伝子を導入してきた。今回、Sonoporation法について、またその研究結果および医療応用について紹介したい。



第192回研究会
「ディスプレイに応用されるセラミックス」
 今回は、ディスプレイに使用されるセラミックス材料について2件の講演を予定しています。1件目は透明酸化物半導体の電子ペーパーへの応用、2件目は超薄板ガラスの開発と応用に関する講演です。現在、持ち運び可能なフレキシブルディスプレイに関する研究開発が精力的に進められています。液晶テレビやPDPに代表される薄型テレビには、大面積の薄板ガラスに代表されるセラミックス材料が多く使用され、ディスプレイを構成する重要な材料となっています。

日時:2010年(平成22年)6月18日(金)14:10~16:50
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(〒530-0005 大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)透明酸化物半導体の電子ペーパーへの応用
凸版印刷株式会社 総合研究所 ディスプレイ研究室
課長 伊藤 学 氏
 我々は透明アモルファス酸化物半導体の「高移動度」、「低プロセス温度」、「透明性」「塗布形成可能」という従来の半導体に無い特色に着目し、電子ペーパー駆動用TFTとして開発に取り組んでいる。その応用例として、「フレキシブル電子ペーパー」、新規ディスプレイ構造「Front Drive型カラー電子ペーパー」そして塗布型酸化物半導体を用いた電子ペーパーを紹介する。

(2)超薄板ガラスの開発
日本電気硝子株式会社 液晶板ガラス事業部 製品技術部、(兼)開発室
製品技術部 部長 三和 義治 氏
 日本電気硝子株式会社は、オーバーフロー成形で薄さ50 μmの超薄板ガラスを開発した。ガラスを薄化することにより発現したフレキシビリティ・軽量化・加工性、超薄板ガラスから新たな用途や新素材としての可能性が生まれることを紹介する。超薄板ガラスは省資源・省エネルギーの環境に優しい材料でもある。



バイオ関連セラミックス分科会第30回研究会
「医療福祉の現状と課題およびそれらを起点とした技術開発」
 我が国は歴史的にも世界的にも前例のない超高齢社会に突入しようとしています。その社会背景の中で、人工関節や人工骨製品の発展にはめざましいものがあり、手術成績の向上につながっています。しかし、術後のQOLやADLの向上や長期的に維持していくには、術後のリハビリテーションの重要性を無視してはなりません。また、それらを支える医療福祉技術の発展は必須要件です。そこで本研究会では、医療福祉の観点から、術後の理学療法に関する現状と課題、それらを支える医療福祉技術開発の課題について、お二人の先生からご講演をいただきます。

日時:2010年(平成22年)7月29日(木)14:00~17:00
場所:島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)

(1)股関節疾患術後の理学療法
大阪医療福祉専門学校 教務部
教務部長 千葉 一雄 氏
 変形性股関節症に対するTKA手術後の理学療法目的は疼痛、ADL、歩行能力・歩容など移動能力の改善に向け、運動療法を実施する。近年、コンポーネント改良に加え低侵襲手術や最新の手術ナビゲーションなどを用いる施設では荷重早期化のみならず脱臼率の減少、可動域の拡大と安定化は飛躍的に患者の活動レベルを向上した報告がある。しかし、患者の歩容は未だ改善は少ない。また、高齢者大腿骨頸部骨折も早期の歩行獲得が約70% しか至っていない。その原因と対策の理学療法について経験を含め概説する。

(2)医療福祉機器の社会ニーズと技術開発
京都大学大学院 工学研究科
教授 富田 直秀 氏
 医療・福祉技術の開発では、言葉や数字に表されない暗黙知を考慮した職人的な作業が必須だが、研究者と職場との結びつきが希薄となった現在では、なかなか技術シーズが現場に応用されにくい問題がある。また、リスクが大きく市場の小さな技術はなかなか実用化されない現実もある。これらの問題の解決のために、経済産業省補助事業で、医療福祉機器の社会ニーズを把握するためのプレインストーミングを行った。その中で示されたニーズなどを紹介しながら医療・福祉技術の開発の問題点を考えてみたい。



第193回研究会

「光機能性セラミックスの応用」
 ニューセラミックス懇話会の第193回研究会と大阪府立産業技術総合研究所の産技研技術セミナーを共同で開催いたします。従来から、大阪府立産業技術総合研究所では、事業の実施により得られた技術情報、大学、あるいは諸団体等の研究情報などを企業の技術高度化に有用な最新情報を普及するため、関係団体と連携して産技研技術セミナーを開催しています。 
 今回は、「光機能性セラミックスの応用」をテーマとし、太陽電池の最新技術動向、照明用LEDについての講演を予定しています。いずれもエネルギーや地球環境に関係した内容となっています。

日時:2010年(平成22年)8月26日(木)14:10~17:00
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(〒530-0005 大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)CuInSe2(CIS)太陽電池の最新技術動向
龍谷大学 理工学部 物質化学科
教授 和田 隆博 氏
 CuInSe2(CIS)太陽電池が注目を集めている。昭和シェル石油は2009年に43MWを生産し国内第5位の太陽電池メ-カ-になり、ホンダも8MWを生産して8位になった。昭和シェル石油は2011年までに1,000MW/年規模での生産を計画している。本講演では、本格的に生産が始まったCIS太陽電池について、CIS光吸収層について材料と製造プロセスを中心に、最近の技術動向について紹介する。

(2)照明用白色LEDの開発
パナソニック株式会社 ライティング社 照明システムR&Dセンター
主幹技師 真鍋 由雄 氏
 地球温暖化の影響が顕著になり世界的に環境意識が高まってきているが、日本の家庭での電力消費は増加しており、とくに照明分野はエアコン、冷蔵庫に匹敵し、照明分野の「省エネルギー」の必要性が高まっている。その施策の一つとして『白熱電球の代替ランプ普及促進』が2008年に掲げられ、LED電球が注目されている。当社では、昨年業界最軽量のLED電球を発売した。そのLED電球の要素技術等を講演させて頂きます。



第194回研究会、バイオ関連セラミックス分科会 第31回研究会

「レーザー工学の基礎と医療への応用」
 20世紀初め、アインシュタインが理論を確立し、20世紀中頃、ベル研により基本特許が提出されたレーザーは、指向性、収束性に優れ、高いコヒーレンス性、フェムト秒発振などの特徴ゆえに、科学計測、通信・情報、加工等、幅広い分野で活用され、レーザーメスなど、医療技術にも応用されています。今回は、レーザー工学と医療応用を題材とし、それぞれ第一線でご活躍の講師から、最前線の技術動向をご紹介いただきます。
 本研究会は、ニューセラミックス懇話会(本体)と同バイオ関連セラミックス分科会の共催の合同研究会で、分科会が企画を担当しました。この機会に懇話会(本体)会員の皆様に分科会の活動を広く知っていただければと思います。
日時:2010年(平成22年)10月22日(金)14:00~17:00
場所:たかつガーデン 2階 コスモス
(大阪市天王寺区東高津町7-11)
(1)レーザー工学の基礎から最前線まで
大阪市立大学大学院 工学研究科
熊谷 寛 氏
 CDやDVDなどでのデータの読み取り・書き込みや、工業製品の溶接、医療機器応用に至るまで、幅広く利用されているレーザーは、その誕生から数えて今年でちょうど50年を迎えた。応用範囲の広さから 「20世紀最大の発明」とも言われ、世紀をまたいでレーザーの用途はさらに新しい分野に広がりつつある一方で、レーザー自体も進化しつづけている。講演ではできるだけセラミックス工学の視点を意識しながら、私たちの生活に欠かせない存在となっているレーザーの、基礎から応用までを概説させて頂く。

(2)バイオメディカルフォトニクスの最新研究動向
防衛医科大学校 防衛医学研究センター
佐藤 俊一 氏
 光のバイオ・生体応用技術(バイオメディカルフォトニクス)はレーザー技術の進歩を背景に急速に発展し、特にここ数年の展開は目覚ましい。本講演ではまず同分野の最新の研究動向について、診断・イメージング技術と治療技術の両方に着目して概観したい。次に演者らが特に注目している光音響イメージング・光散乱イメージング、レーザーを用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)、中枢神経系の光制御技術について最新データを交えて紹介し、今後の展望に触れたい。



ニューセラミックス懇話会 第195回特別研究会 40周年記念事業 プレイベント -技術・情報の交流と創造展-

 ニューセラミックス懇話会では、「第195回研究会」を昨年に引き続き「特別研究会」として開催いたします。定期的な「研究会」とは趣旨が異なり、「特別研究会」は、ニューセラミックス懇話会の会員の皆様から自社製品、技術、研究等の情報を積極的にアピールして頂く情報発信の場、また会員相互の情報交流を密にする場にしたいと考えています。会員の皆様にメリットのある研究会にしようと企画しました。自らの研究や開発成果を積極的に発信し、様々な分野や価値観をもった人々と交流することにより、新たなビジネスチャンスが生まれるのではないかと考えています。
 ニューセラミックス懇話会は、2012年に創立40周年を迎えます。今回の特別研究会を40周年記念事業のプレイベントに位置づけ、パネルディスカッションを行います。会員の皆様の多数のご参加を心よりお待ち申し上げます。

日時:2010年(平成22年)12月17日(金) 13:30~18:30
場所:たかつガーデン 3階 カトレアおよび2階 コスモス
(大阪市天王寺区東高津町7-11)


(1)基調講演 住友電工における合成ダイヤモンドの開発 ~探索研究から事業化までの山と谷~
住友電気工業株式会社 エレクトロニクス・材料研究所
アドバンストマテリアル研究部 グループ長
角谷 均 氏
 住友電工では、25年前に単結晶ダイヤモンドの実用化に世界で初めて成功、その後、大型化、高純度化、結晶性向上などの技術開発を進め、今では、天然ダイヤモンドを凌ぐ品質の1センチ級大型結晶が合成可能となっている。また最近、ナノ多結晶ダイヤモンドの開発に成功、合成ダイヤモンドの大きな新展開が期待されている。これら合成ダイヤモンドの研究から開発、実用化までの経緯とブレークスルーポイントについて紹介する。


(2)会員企業による口頭発表
  • コンデンサ用チタン酸バリウムの開発について
    堺化学工業株式会社 電子材料事業部 大剣工場 技術課長 国吉 幸浩 氏
  • 日本ピローブロックにおけるセラミック軸受の開発
    日本ピローブロック株式会社 技術顧問 吉村 茂 氏

(3)パネルディスカッション ~ニューセラミックス懇話会が目指すもの~
 創立40周年記念事業のプレイベントとして開催いたします。ニューセラミックス懇話会が会員サービスの一層の充実を図り、今後目指すべき方向性について議論します。

コーディネーター:和田 隆博 氏(龍谷大学教授、NCF会長)
パネラー:国吉 幸浩 氏(堺化学工業(株)、会員企業)、吉村 茂 氏(日本ピローブロック(株)、会員企業)、芝崎 靖雄 氏(元産業技術総合研究所、NCF理事)、久米 秀樹 氏(NCF事務局幹事)

(4)産・学・官 会員によるポスター・製品発表(25件)
(5)会員交流会


バイオ関連セラミックス分科会 第32回研究会
「進化する医療機器:臨床使用に至るまで」
 新しい医療機器が臨床使用に至るには、研究成果としての新しい知見に基づくデザイン(機能付与)、それを具現化するモノつくり、医療機器としての安全性評価、そして手術を行う上でのシステム化が必要です。今回は、新しい医療機器が臨床使用できるようになるまでの過程と現状を、医療機器の商品化を推進されている立場でご説明頂き、要素技術的な開発成果を医療機器の商品化に結びつける上で必要な手順、留意点および治療効果について議論を交わす予定です。
日時:2011年(平成23年)2月10日(木)14:00~17:00
場所:(株)島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)
(1)医療現場(手術室)で活躍する最新の医療機器
瑞穂医科工業(株) 開発部
チーフマネージャー 池田 大作 氏
 手術室で用いられる様々な医療機器の中で、当社で製造販売している製品を通して、最新の治療方法の一部をご紹介致します。例えば、整形外科の人工関節や骨折治療材料、脳神経外科の脳動脈瘤クリップ、またそれらインプラントを設置する為のツールやシステム。また、最近では蛍光試薬を用いて血流を確認する蛍光カメラが注目を集めています。材料や電子部品の急速な進歩により、医療機器もどんどん新しくなっています。

(2)革新的なステントの研究開発と実用化
(株)日本ステントテクノロジー
代表取締役社長 山下 修蔵 氏
 プラットフォームが「形状設計」、「精密加工」、「DLCナノコート」の3つのコア技術を基にした全リンク型ステントとこれに薬剤をコートした薬剤溶出ステントの研究開発について紹介する。更に、欧州における臨床試験結果の概略につき説明すると共に、欧州における事業展開につき紹介する。