■ 2019年4月~2020年3月の研究会実施記録 

第236回研究会(センシング技術応用研究会と合同開催)
「非破壊計測技術の最前線と応用展開 」

日時:2019年(平成31年)4月19日(金)13:25~16:35
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
講演(1)電磁超音波探触子を用いた遠隔監視技術
神戸大学 名誉教授 小島 史男 氏
 センサーネットワークを活用した構造物の遠隔支援にもとづく供用期間中検査が注目されている。本講演においては、電力プラントの配管系統に係る健全性評価を目的として、電磁超音波探触子(EMAT)を配管内に定点設置し、配管減肉の監視を行うシステムについて紹介する。

講演(2)セラミックス製造プロセス中の構造変化過程のオペランド観察
神奈川県立産業技術総合研究所 研究開発部
常勤研究員 高橋 拓実 氏
 粉体から焼結体に至るセラミックス製造プロセスの科学的体系化を目指して、医療分野で発達した光コヒーレンストモグラフィー(OCT)装置を基盤技術とした観察システムにより、これまでブラックボックスだったプロセス中の多様な構造変化過程のオペランド観察を行っている。本講演では、その成果の一部を紹介する。

製品紹介(3)最新の超音波計測・評価技術~柔軟性探触子、空中超音波計測、超音波伝搬シミュレータ~
ジャパンプローブ株式会社 研究開発センター 副主任研究員 田中 雄介 氏
 柔軟性のある曲がる超音波探触子、空中超音波による非接触計測、超音波伝搬シミュレータによる超音波伝搬の可視化と探触子の評価法について発表する。また、柔軟性超音波探触子や空中超音波の適用例についても発表する。

交流会(17:00~18:30)



バイオ関連セラミックス分科会第60回研究会
「医療を支える情報科学 -医療材料設計への活用-」
 元来、絨毯爆撃的に行われてきた材料開発に変わり、最近では、情報科学を利用した合理的な材料開発が行われてきています。定量的情報を、直接的に得るための実験・理論計算手法が格段に進歩し、これまで未知であった材料構造情報を直接に、また定量的に得ることが可能になってきました。医療材料分野においても、期待される機能を持った新しい材料の創製に情報科学の貢献が期待されます。第60回研究会では、すでに医療材料に関して情報科学に基づいた研究をされている著名な先生お二人にご講演をいただきます。

日時:2019年(令和元年)5月10日(金)13:50~16:50
場所:大阪市中央公会堂 地下 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)マテリアルズインフォマティクスを活用した材料開発の展望
MI-6株式会社 事業開発マネージャー 入江 満 氏
 材料が最終製品として世に出回るまでのプロセスは大きく分けて「材料開発」「生産」「物流」「販売」がある。近年の情報技術の進歩はIoTや自律型ロボットを生み、「生産」以降のプロセスで革新をもたらしているが、「材料開発」は旧態依然としており長らく革新的な手法が生まれていない。そこで期待されるのが情報科学を応用するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)である。本講演では、MIの概要および応用事例を紹介するとともに、次世代の材料開発を議論したい。

(2)実験とデータ科学の融合によるバイオ界面分子プロセスの解析と材料設計
東京工業大学 物質理工学院 材料系 准教授 林 智広 氏
 人工血管、バイオセンサーなどに用いられる生体分子・細胞の接着を忌避する(抗付着性)表面における分子プロセスに関して議論する。特に表面力測定・振動分光、シミュレーションの結果から、界面の水分子が抗付着性に重要な役割を果たしていることを報告する。後半ではデータ科学に基づいた「欲しい細胞応答を誘起する材料の設計」について議論する。人間の科学的経験の定量化、逆問題解法的材料設計についても紹介する。



第237回研究会
「水素に係る最新技術」
 水素は、化学反応の副生物や水の分解反応等により製造されており、化学合成の重要な原料です。また、究極の循環型次世代クリーンエネルギーとして注目され、利用が進められています。本研究会では、水素の製造と利用に関する最新技術について紹介して頂きます。製造について、微粒子光触媒材料を用いた太陽光による水の分解反応から水素を製造する要素技術と小規模なプラントについて講演して頂きます。利用では、水素人類史上最も価値がある反応と言われているアンモニア合成反応に用いる新規なヒドリド化合物を用いた触媒と水素エネルギー社会の実現に向けて必要な水素ステーションの整備等について、それぞれ講演して頂きます。

日時:2019年(令和元年)6月4日(火)13:45~16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)ヒドリド化合物を利用した低温アンモニア合成触媒の開発
東京工業大学 元素戦略研究センター 准教授 北野 政明 氏
 我々は、低温・低圧で高効率に作動するアンモニア合成触媒の開発に従事してきた。その中で、エレクトライドやヒドリド化合物をRu等の金属ナノ粒子触媒の担体として用いることで、既存触媒よりも遙かに高い触媒活性を実現した。アンモニア合成反応メカニズムにおける、電子およびH-イオンの役割やこれまで開発してきた新規触媒について体系的に紹介する。

(2)水素エネルギー社会実現に向けた岩谷産業の取り組み
岩谷産業株式会社 上級理事 中央研究所 副所長 繁森 敦 氏
 究極の循環型クリーンエネルギーとして注目を集める水素。次世代エネルギーの一つとして注目される水
素の普及に関する様々な取り組みが各地で進められている。本講演では、水素ステーション整備・Power to Gas実証等、水素エネルギー社会実現に向けた当社の取り組みとその課題について紹介する。

(3)固体光触媒を用いる水からの水素製造
東京大学 大学院工学系研究科 教授/信州大学 環境エネルギー材料科学研究所 特別特任教授
堂免 一成 氏
 太陽光と水から水素を製造する光触媒開発の現状と今後の展望について講演する。特に講演者が開発を進めている、微粒子光触媒材料の開発とその大規模展開に必要な技術要素について述べる。半導体光触媒は光を吸収する材料と水素および酸素を生成する活性点からなる。どのようにして光触媒の効率を上げていくかについて議論するとともに、その様な水素製造システムの小規模なパイロットスケールプラントの開発についても紹介する。



第238回研究会
「セラミックス材料の新規合成法 -薄膜化と微粒子化-」
 薄膜や微粒子に加工されたセラミックス材料は、種々の機能性デバイスに広く利用されています。薄膜化や微粒子化により、バルク材料には見られない特徴的な性質が発現するため、種々の方法でセラミックス材料の合成や加工が行われています。本研究会では、セラミックス材料の合成に関する最新の技術と応用について紹介して頂きます。薄膜化については、水溶液中での錯イオンの加水分解反応を利用して金属酸化物薄膜を作製する液相析出法について講演して頂きます。また、微粒子化については、熱膨張の制御が強く求められているパワー半導体や3次元集積回路に必要不可欠な負熱膨張材料について講演して頂きます。

日時:2019年(令和元年)8月30日(火)13:50~16:45
場所:大阪市中央公会堂 地階 大会議室
(大阪市北区中之島1丁目1番27号)
(1)水溶液からの酸化物薄膜合成 -液相析出法-
龍谷大学 理工学部 物質化学科 教授 青井 芳史 氏
 水溶液中での金属フルオロ錯イオンの加水分解平衡反応を利用して、反応溶液中に浸漬した基板上へ金属酸化物薄膜を成膜する方法である液相析出法について概説する。本方法は、水溶液から基板上への直接薄膜合成法であり、低エネルギーで、基板追従性に優れた成膜法である。講演では、液相析出法の原理、各種金属酸化物薄膜合成の実例、金属酸化物中空粒子、金属酸化物インバースオパールの作成等について紹介する。

(2)負熱膨張微粒子による電子デバイスのサーマル・マネジメント
名古屋大学 大学院工学研究科 応用物理学専攻 教授 竹中 康司 氏
 微細化や高出力化が進む電子デバイスはじめ様々な産業分野で熱膨張制御が強く求められている。例えばパワー半導体や3次元集積回路など先端デバイスの高機能化・省電力化・長寿命化には、樹脂フィルム、接着剤、層間充填材などの熱膨張制御が不可欠であるが、それらの部材は数μm程度であり、サブミクロンから1 μm程度の熱膨張抑制剤が必要である。「温めると縮む」負熱膨張材料の微粒子化について現状と展望を紹介する。



第239回研究会、バイオ関連セラミックス分科会第61回研究会
「歯科用セラミックスの最前線」
 わが国では、20代の80%以上、40代以上のほとんどが虫歯や歯周病に罹っています。歯科用セラミック材料のニーズは高く、新しい技術、材料の登場が期待されています。CAD/CAMを用いた歯科用セラミックス加工システムは、歯科クラウンを型どりなしに、医院のその場で、撮像、加工する技術として開発され、歯科学会で新技術として紹介されています。また、顎骨再建用に、吸収性を持つ新しいセラミックス材料が、昨年から販売され、今春、日本イノベーション大賞を受賞しました。今回は、最新の歯科用セラミックスの加工と新材料についてご講演頂きます。

日時:2019年(令和元年)10月25日(金)13:50~16:50
場所:島津製作所 関西支社 マルチホール
(大阪市北区芝田1-1-4 阪急ターミナルビル14F)
(1)先進的セラミック治療『セレックワンビジットトリートメント』
デンツプライシロナ株式会社
マーケティング本部 プロダクトマーケティングテクノロジーグループ
インラボプロダクトマーケティングマネージャー 西澤 省三 氏
 歯科で使用するマテリアルには様々なものがあります。セレックシステム(CAD/CAM)で使用する、物性の安定したファインセラミックは生体親和性に優れ、口腔内の過酷な環境においても、今までのマテリアル以上に再治療の少ない治療方法です。また、セレックシステムを使用した治療は30年以上の歴史があり、特徴の「ワンビジットトリートメント」(一回の来院で終わる修復)は、忙しい現代の患者ニーズにマッチします。

(2)炭酸アパタイト骨置換材
九州大学 大学院歯学研究院 教授 石川 邦夫 氏
 骨と同じ組成である炭酸アパタイト骨補填材が2017年に薬事承認され、サイトランス グラジュールとして歯科領域で臨床応用されている。我が国ではインプラント治療を前提とした人工骨補填材は薬事承認されていなかったが、サイトランス グラジュールはインプラント治療を前提とした骨再建を含め全ての歯科・口腔外科領域での使用が薬事承認された。講演では炭酸アパタイト骨補填材の特徴や治験について概説する。



第240回特別研究会
「技術・情報の交流と創造展」
 ニューセラミックス懇話会では、毎年12月に行われる研究会を「特別研究会」として開催しています。「特別研究会」は、通常の「研究会」とは開催趣旨が異なり、ニューセラミックス懇話会の会員の皆様から自社製品、技術、研究等の情報を積極的にアピールして頂く情報発信の場、また会員相互の情報交流を密にする場にしたいと考えています。会員の皆様に有意義な内容になるように企画しています。様々な分野や価値観をもった人々と交流することにより、新たなビジネスチャンスが生まれることを期待しています。
 今回の「特別研究会」では、大学や研究機関で長年にわたり新規材料の研究開発や事業化を行ってこられました先生方から、ナノ材料の研究開発から応用展開、およびセラミックスの最先端レーザー加工について講演して頂きます。

日時:2019年(令和元年)12月12日(木)13:45~18:30
場所:大阪府教育会館「たかつガーデン」 3階カトレア(基調講演)、2階コスモス(ポスター発表、交流会)
(大阪市天王寺区東高津町7-11)
(1)ナノを創る、ナノを活かす、ナノで連携
地方独立行政法人大阪産業技術研究所 理事長 中許 昌美 氏
 ナノ粉末やナノインクといった材料の研究開発を先駆的に行い、プリンテッドエレクトロニクス(印刷エレクトロニクス)に応用展開し、さまざまな連携活動を通じて産業界の課題に応えてきました。新たな価値の創造のためにオープンイノベーションが声高に語られていますが、ナノ粉末・ナノインクの研究開発を通じた実践例を紹介する事で、未来技術の開発を目指す皆様へのヒントになればと思います。

(2)進化し続けるセラミックスへの革新的レーザー加工技術
京都大学名誉教授/京都市成長産業創造センター長/日本セラミックス協会前会長
平尾 一之 氏
 1960年に最初のレーザーが米国ヒューズ研究所により製造され、1970年代からは半導体レーザーなどの新しいレーザー開発も進み、計測、通信、医用、加工関連と市場は幅広くなり、レーザー加工関連のベンチャー企業も多くなった。本講ではセラミックスへの応用に関する様々な最先端レーザー加工技術について紹介する。

(3)産・学・官 会員によるポスター・製品発表
(4)会員交流会



バイオ関連セラミックス分科会第62回研究会
「金属に関する摩擦撹拌接合と表面処理」
 金属はセラミックスや高分子と並ぶ3大材料の一つであり、生体材料ではそれぞれ必要な力学的強度に応じて材料の使い分けが行われています。しかし、これらの材料はお互いに接合することが難しく、またこれら材料の一部分(例えば表面)だけに新しい性質を付与することは容易ではありません。そこで、このような課題を解決するために、異種の金属に対する接合や金属に対する表面処理を行う技術は重要と考えられます。また、このような技術が進んでいくと、さらにはセラミックスへの応用にも発展されるのではないかと期待されます。そこで本日は、金属に関する摩擦撹拌接合と表面処理と題して先生にご講演頂きます。

日時:2020年(令和2年)1月31日(金)13:50~16:50
場所:エルおおさか(大阪府立労働センター) 南館10階 南101
(大阪市中央区北浜東3-14)
(1)人工骨用Ti材の強度向上手法
株式会社オキソ R&D室 室長 廣島 禎士 氏
 人工骨として広く適用事例が多いチタン材については、「耐摩耗性」や「疲労強度」について多くの研究がされてきた。 近年 人工骨用生体材料として多くの要求を解決する為にβ-型チタン合金が開発されているが、チタンの基本材料とも言えるTi-6Al-4V合金の強度向上手法として、自動車用材料への強度向上手法として多用され、日本独自で大きく技術発展してきた「ショットピーニング」技術を用いた高強度人工骨用チタン材をご紹介する。また、生体親和性向上の為の弊社の新しい取り組みも合わせてご紹介する。

(2)鉄鋼材料の摩擦接合―ツールの必要な摩擦攪拌接合、ツールの不要な線形摩擦接合
大阪大学 接合科学研究所 教授・副所長 藤井 英俊 氏
 金属材料を溶かさず接合できる新規摩擦接合技術が注目されている。特に、鉄鋼材料の接合に関しては、A1点以下の温度で、変態させず接合することで、鋼中のC量に関係なく接合が可能になった。当日は、代表的な方法として、セラミックス等からなる回転ツールを必要とする摩擦攪拌接合(FSW)とツールを必要としない線形摩擦接合(LFW)について紹介する。