■ 第46回ニューセラミックスセミナー 

IoTの現状と展望
     - IoTを支えるセンシング技術-
  • 日時:2019年(平成31年)2月26日(火)10:00~16:45
  • 場所:大阪産業創造館 6階 会議室E
    (大阪市中央区本町1-4-5)
  • 主催:ニューセラミックス懇話会、(一社)大阪府技術協会
  • 後援:地方独立行政法人大阪産業技術研究所
 
 今回のセミナーでは、IoT(Internet of Things)に焦点を当て、IoTにより大きく変化している社会とIoTに必要不可欠なセンシング技術をテーマとし、「IoTの現状と展望 - IoTを支えるセンシング技術 -」と題して開催します。IoTにおけるリアルな物質の世界とサイバー空間(コンピュータ等)を結びつけるセラミックス材料等を用いた低消費電力のセンシング技術に注目した内容になっています。
 IoTとは、ヒト、モノおよびサービスがネット空間で結合し、そこから「価値創造」されることと言われています。近年の著しいネットワーク、コンピューティングおよびセンシング技術のイノベーションにより、IoTが顕著なものになってきました。製造業では、第4次産業革命の一環として、ドイツの「Industrie 4.0」やGEの「Industrial Internet」等が注目されています。日本では、『未来投資戦略2018』「Society 5.0」「データ駆動型社会」が策定され、官民挙げてIoTを推進しています。
 一方、センシング技術は、IoTのキーデバイスであり、従来よりも正確にしかも迅速に機能するセンサーが求められています。自動運転やロボットを始め、人間の五感に変わるセンシング技術が益々重要になっています。また、センサーを駆動されるための省電力化技術の開発も急務となっています。
 セミナーでは、IoTのものづくりや社会に与える影響(価値創造)、人体計測、自動運転、環境発電およびガスセンサー等のセンシング技術や材料について講演して頂きます。
 セミナーに参加して頂いた皆様にとり、IoTの現状と展望および IoTを支える省電力化されたセンシング技術に関する最新動向や課題あるいはビジネスチャンスについての有意義な内容になっています。


プログラム

(1)手段としてのIoTはものづくりに何をたらすか
三菱電機株式会 FA システム事業本部 FAソリューションステム部 大谷 治之 氏

 我が国ではスマート社会の「Society5.0」と、それを実現するための「Connected Industries」について様々な取り組みや方向性が示されている。 本講演では、三菱電機が提唱するe-F@ctoryと、 AI・知能化ロボットを活用したスマートファクトリーの実例を示すことで、次世代のものづくりの方向性を提案する。

(2)NTTにおけるIoT価値創出に向けた取り組み
日本電信電話株式会社 NTT未来ねっと研究所 田中 裕之 氏

 「人と人」をつなげるコミュニケーション手段から、インターネットの登場と普及によって「人と情報」をつなげる情報流通の手段へと進化した情報通信ネットワークは、今、実世界のあらゆるモノの情報をもとりこんで社会を駆動するIoTの時代へと、更なる進化を遂げつつあります。本講演では、実世界(リアル)と情報世界(サイバー)を結びつけ価値創出につなげるIoTの取り組みを、NTTでの具体的な事例をあげながらご紹介します。

(3)人体計測を中心とした「革新的イノベーション創出プログラム」の現状
大阪大学 COI研究推進機構 機構長 上野山 雄 氏

 革新的イノベーションプログラムとは、10年後、どのように社会が変わるべきか、人が変わるべきか、その目指すべき社会像を見据えたビジョン主導型のチャレンジング・ハイリスクな研究開発を支援するプログラムです。平成25年度に文部科学省により開始され、大阪大学拠点はビジョン2の拠点として採択されました。
 現代はストレス社会、日常的に心と体はストレスを受け、潜在力の発揮は妨げられています。本拠点は、10年後のビジョンとして、子供から高齢者に至るまで、人間力を活性化させ、常に潜在力(個人の持つ最大の能力)を発揮できる“スーパー日本人”を育成、一人ひとりが自立し、自ら積極的に課題に立ち向かう“セルエンパワーメント社会”の実現を目指しています。

(4)自動運転へ向けたドライバー状態のセンシングとモニタリング技術
オムロン株式会社 技術・知財本部 センシング研究開発センタ 木下 航一 氏

 近年、運転中のドライバー状態をモニタリングする技術に対するニーズ急速に高まっている。こういった要望に対処するため、われわれはカメラ画像よりドライバー状態を高精度認識するセンサーの開発に取り組んでいる。
 本講演では自動運転時代を見据えてこのような技術が関心を集める背景について説明した後、ドライバーのさまざまな動作・状態を高精度にとらえるための時系列ディープラーニングを活用した高精度なドライバー状態推定技術、さらにより深い内面状態推定への進化について、主として弊社の技術を例にとりながら最新の動向を説明する。

(5)電池交換不要な環境発電センシング技術~ビーコンやセンシングシステムをメンテナンスフリーに~
株式会社日立製作所 研究開発グループ エレクトロニクスイノベーションセンタ
情報エレクトロニクス研究部 藤森 司 氏

 IoT分野においてバッテリ交換を不要とするための環境発電の活用が期待される。その実現にむけたキー技術として、環境発電の微少なエネルギーを効率的に活用するエネルギーマネジメント回路技術を開発した。開発技術を用い、日常的な空間における室内照明光で発電および蓄電を行い、安定動作するビーコンや無線センサ端末を製作・実証した結果を紹介する。


(6)世界初の超低消費電力薄膜ガスセンサーの開発とセレンディピティ
大阪ガス株式会社 イノベーション本部 エネルギー技術研究所 大西 久男 氏

 講演者は、半導体ガスセンサーの基礎研究に携わった後、十数年の開発期間を経て、永年「夢の技術」と言われてきた電池駆動都市ガス警報器を世界で初めて実現した。電池駆動化実現の鍵となった超低消費電力薄膜ガスセンサーの中核技術である「ナノ柱状構造薄膜」、「高選択性酸化触媒」などの開発成果はセレンディピティの賜物であった。本講演では、本センサーの開発経緯についてご紹介するとともに、セレンディピティ発揮のポイントなどについて述べる。